CFD取引におけるロスカットとは
CFD（差金決済取引）では、証拠金を担保にレバレッジを利用した取引を行います。そのため、相場が予想と逆方向に動いた場合には損失が急速に拡大する可能性があります。このリスクを抑えるために導入されているのがロスカット制度です。ロスカットとは、証拠金維持率が一定の水準を下回った際に、強制的にポジションが決済される仕組みです。投資家の資産がマイナスにならないよう保護する役割を持っています。
証拠金維持率の基本計算式
ロスカットは「証拠金維持率」を基準に判定されます。証拠金維持率は以下の計算式で算出されます。
証拠金維持率（％）＝ 有効証拠金 ÷ 必要証拠金 × 100
- 有効証拠金：口座残高に含み損益を加減した金額
- 必要証拠金：建玉を維持するために必要な証拠金
この維持率がロスカット水準（例：50％以下など）を下回ると、保有しているポジションが強制的に決済されます。
CFDロスカット水準の例
証券会社やFX業者によってロスカット水準は異なりますが、一般的には以下のように設定されています。
- 証拠金維持率100％未満：追加証拠金（追証）の発生
- 証拠金維持率50％未満：ロスカット発動
つまり、含み損が増加して維持率が50％を切ると、自動的に強制決済が行われます。
CFDロスカット計算のステップ
ステップ1：必要証拠金を計算
必要証拠金 ＝ 取引金額 ÷ レバレッジ
例：日経225CFDを1枚（想定元本300万円）取引、レバレッジ10倍の場合
必要証拠金 ＝ 300万円 ÷ 10 ＝ 30万円
ステップ2：有効証拠金を計算
有効証拠金 ＝ 口座残高 ＋ 含み損益
例：口座残高50万円、含み損−15万円の場合
有効証拠金 ＝ 50万円 − 15万円 ＝ 35万円
ステップ3：証拠金維持率を計算
証拠金維持率（％）＝ 有効証拠金 ÷ 必要証拠金 × 100
35万円 ÷ 30万円 × 100 ＝ 116％
この場合はまだロスカット水準50％を上回っているため、強制決済は発生しません。
ステップ4：ロスカットが発動する水準を逆算
ロスカット水準が50％の場合、
ロスカット基準額 ＝ 必要証拠金 × 50％
30万円 × 0.5 ＝ 15万円
つまり、有効証拠金が15万円以下になるとロスカットが発動します。
ロスカット発動の具体的シナリオ
- 口座残高50万円
- 必要証拠金30万円
- ロスカット水準50％
この条件下で含み損が35万円に達した場合：
有効証拠金 ＝ 50万円 − 35万円 ＝ 15万円
証拠金維持率 ＝ 15万円 ÷ 30万円 × 100 ＝ 50％
維持率が50％となり、ロスカットが発動します。
CFDロスカット回避のためのリスク管理
1. レバレッジを抑える
高いレバレッジは証拠金維持率を急速に低下させます。レバレッジを下げることでロスカット水準に達しにくくなります。
2. 証拠金を厚く入金する
余裕資金を入金しておくことで、有効証拠金が増加し、維持率が安定します。
3. 損切りルールを設定
ロスカットに任せるのではなく、自らストップロスを設定し、計画的に損失を限定することが重要です。
4. ポジションの分散
同一銘柄や同一方向の取引に偏らず、複数の銘柄や方向で分散することでリスクを軽減できます。
5. 証拠金維持率の定期的チェック
取引中は常に維持率をモニターし、危険水準に近づいたらポジション調整を行います。
CFDロスカット計算の応用例
為替CFDの場合
例：米ドル/円を1万通貨、レバレッジ25倍で取引
取引金額＝1万ドル×150円＝150万円
必要証拠金＝150万円÷25＝6万円
もし口座残高10万円で含み損が7万円発生した場合：
有効証拠金＝10万円−7万円＝3万円
証拠金維持率＝3万円÷6万円×100＝50％
この時点でロスカットが執行されます。
株価指数CFDの場合
例：NYダウCFD1枚（想定元本200万円）、レバレッジ20倍
必要証拠金＝200万円÷20＝10万円
口座残高20万円で含み損15万円の場合：
有効証拠金＝20万円−15万円＝5万円
証拠金維持率＝5万円÷10万円×100＝50％
維持率が50％に到達し、強制決済が発動します。
CFDロスカット計算の重要性
CFDは高いレバレッジをかけられる魅力がある一方で、予想外の値動きによって短時間で維持率が急落するリスクがあります。ロスカット計算を事前に行うことで、どの水準で資金が強制的に守られるのかを理解でき、過度なリスクを取らない投資判断に繋がります。
まとめ
CFD取引においてロスカットは、証拠金維持率が基準値を下回った際に強制的にポジションを決済する仕組みであり、投資家の資産保護に不可欠です。計算式は「有効証拠金÷必要証拠金×100」で維持率を算出し、その数値が50％以下になるとロスカットが発動するのが一般的です。必要証拠金や含み損益を基にシナリオを計算することで、どの段階で強制決済されるかを事前に把握できます。ロスカットを避けるにはレバレッジを抑え、証拠金を厚くし、損切りルールやポジション管理を徹底することが重要です。CFD取引を行う際は必ずロスカット計算を念頭に置き、計画的な資金運用を行うことが長期的な安定収益につながります。